Commissioned works


rose
およう 縛り四連襖絵
2001年  鳥の子襖に水干絵の具  各92 ×184 cm×4枚


映画『およう』…2002年5月公開作品。熊川哲也・澁谷亜紀・竹中直人主演。 監督・関本郁夫。
大正の抒情画家・竹久夢二、油画の重鎮・藤島武二、異色の責め絵師・伊藤晴雨と、全く違うタイプの画家達に愛された、日本初の裸婦モデル・お葉をめぐる物語。 …物語のクライマックス、おようを巡って夢二と晴雨が衝突するシーン、伊藤晴雨自宅セットに使用されました。

とにもかくにも、私がひょんなことで描くことになった、初めての日本画(もどき)です。試行錯誤しながら無我夢中で描きました。 制作中はプレッシャーとの闘いで、何度軽々と引き受けた自分を呪ったか知れません。

この絵自体は晴雨の完全な模写ではなく、晴雨の数々の縛りポーズの中からセレクトし、モデルを用いて改めてポーズをとり、描き起こしました。 全体的なイメージには、竹久夢二の影響もあったように思います

この絵を描いたのをきっかけに、自分の作品でも日本画を描くようになり、映画のセットで用いる絵はもちろん、椎名林檎双六、挿絵など、様々な仕事を頂くようになりました。 とあるSMカップルから、私の縛った奴隷を描いて下さい〜!と、頼まれたこともあります。

ただ、私に作家としての「作品意識」が芽生え、葛藤が始まったあたりから、「伊藤晴雨」の亜流的見方をされるのが嫌でしょうがなくなり (晴雨自体は大好きなんですが)、3年間ぐらいこの絵を見るのも、私の絵として露出するのも嫌な時期がありました。

去年の秋、久しぶりにこの絵を改めて見る機会がありました。なんとなく自分のやりたいことが明確になってきた今日この頃。 いろんな意味で原点、出発点となったこの絵を受け入れられるようになりました。

おそらく、こういった「縛り」の絵を描くことは今後ないかと思います。 でも今、最初に描いたこの作品が日本にあり、気軽に見にいける環境にあることは、嬉しいことだと思っています。 (09年現在)



襖の裏側です。たくさんの筆書きエスキース(模写)が貼り付けてあります。

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