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「究極の男体盛り」 [ヴァニラ画報2005]

『ぬるぬる燗燗』という映画を最近観ました。8年ほど前「処女の肉体で暖めた究極のぬる燗を追い求める居酒屋親父の奮闘記」というサブタイトルに大興奮、絶対に観たい!と思ったものの、残念ながら既に上映後…。今に至っていたのが、遂にビデオを発見!長年の想いを遂げることが出来ました。

「究極のぬる燗」に懸ける男の情熱が切ないまでに描かれているこの映画は、女体酒器というSM的な視点というよりはむしろ、「旨いぬる燗を求めた果てに辿り着いた処女燗器」という点に趣が置かれています。美味しそうにこのぬる燗を飲んでいる男達の姿は演技とは分かっていてもとても幸せそうで、こちらの心もじんわり暖かくなってきます。私も旨いぬる燗が飲みたくなってきました。

折しも現在、私が取り組んでいるテーマは「Beauty of my Dish -私の男体皿-」。男性の身体を皿にした、男体盛り画を製作している最中でした。製作に当たり、人体の体温や発汗、オーラが食材にどう影響を与えるのか?それらを旨く活用できれば、保冷・温機能を兼ね備え、食材の持ち味を引き出す究極の盛皿になるのではないか?…云々、課題は山盛りです。

今描いているのはオーソドックスな「鯛の刺身盛り」。暖かい人体に刺身は一見不味そうに思われますが、少々暖めることで蛋白質が分解されアミノ酸に変化し、旨味が増します。男体を使ったのは女性に比べて体温が安定しており皿としてより適しているからで、私の趣味だけではありません。

「旨いぬる燗の為に酒器になった女」と、私の「旨い刺身の為に皿になった男」は互いにシンクロし合い、イメージをかき立てられました。できるなら私も、この美食世界を多くの人達に味わってもらいたい、そしてそう思わせるよう仕向けるのは作り手の手腕である、と私はこの映画で学んだような気がします。

そんな訳で私も不肖ながら「究極の男体盛り」を追い求め、日々奮闘中なのでした。是非の機会にご賞見下さい。

木村了子





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